連携・突破・創新による地域のアップデート ──これがENGINEで身に付く、次代を創造する力

地域の「テロワール」が格別な商品となる

ENGINEプログラムでは、各地域の生活・文化などの特徴を形成している「交通」、「食」、「インフラ」、「観光」を地域の「基幹産業」と定義し、重点的に連携を強めていく。エリア・大学ごとに見ると、信州大は交通と食、富山大は交通、金沢大は観光という形で、それぞれの大学や地域によってもグラデーションがあることも地域性を大事にしていることの現れである。

地域でしか持ち得ない特徴を、林教授は自身の研究テーマの地域ブランドでよく使われる「テロワール」になぞらえて表現する。(テロワール:フランスが語源で、農産物栽培等における地域の気候風土による特徴を指す言葉)

「例えば長野県や富山県にまたがる日本アルプスは、動かすことができない不動産です。また、それらが生み出す地勢や自然環境、気候・風土、生活・文化も他に持ち出すことはできません。そのため首都圏はもちろん、他県でも提供できないオリジナル・ユニークなものとなります。地域にはそこにしかない固有の資源が豊富にあります。」

「冒頭でお話した北陸新幹線や高速道路などによって可能となる首都圏からの距離感も他県とは異なるものであり、地方創生を考える際に重要なテロワールとなります」
北陸と首都圏をつなぐハブ。これもアドバンテージになると言うのだ。

こうして各地域の特徴を活かし、テロワールを醸成し磨き上げていけば、どこにもない商品や産業が際立っていく。3大学・3地域で互いに切磋琢磨すると同時に、全体で円陣を組んでいく。双方の好循環が機能していけば大きな武器になるに違いない。

林教授は、「ここ数年、地域の課題にとても熱意を持った学生が増えている」という肌感覚を持ち、時代の状況が生みだしたのではないかと分析する。
人口減少とコロナ禍というファクターのもと、エンジンは回り出した。まだまだ調整事項は山積しているというが、強固な円陣によってどう進んでいくか、興味は尽きない。


信州大学 林 靖人教授
愛知県出身。信州大学大学院総合工学系研究科修了(博士:学術)。専門は感性情報学。心理学的知見を応用し、ブランド認知の仕組みやブランド構築の実践的研究をおこなう。また、大学発ベンチャーでの社会調査や行政計画策定等の事業経験を活かし、信州大学の産学官連携やキャリア教育、地域貢献活動のプロデュースを担当する。